iPhoneの本質 Androidの真価

IPHONEの本質 ANDROIDの真価

IPHONEの本質 ANDROIDの真価

iPhoneAndroidに端を発する、世界規模での "モバイルネット革命" についてアプリ開発、通信事業者のビジネス、オープン化という観点で紐解いた書。2008年9月25、26日に開催された「オープンモバイル・コネクションズ2008」での公演を収録。

通信業界の動向把握には定評のある日経コミュニケーション編。

前半にはiPhone、後半はAndroidの観点からまとめられている。

アプリ開発は「砂場」から「大平原」へ」、と佐々木氏は語る。

アプリ開発の歴史>
2001年 NTT DoCoMo iアプリ。Javaの世界で言うサンドボックス(砂場)モデル。いろいろな環境や土地があるがアプリ開発者に与えられた環境は砂場だけ。それでも何もなかったころに比べたら画期的。

2001年11月 J-SKY用のJava。3DのAPIJavaからアクセスできるようになった。砂場にいるけど遊具(3DのAPI)が使えるようになった。

2003年 KDDIBREW。砂場と比べたら大平原。ただ、その入口と出口に厳しい警備員がいる。

2008年 iPhone。大平原だけれども、たまに柵がある。例:動画処理はできない。加えて、プログラマ同士の情報交換ができないというNDAがあって、とても孤独。(2008年10月にNDAは解除)

同年 Android。柵のない大平原で好き勝手に自由にやっていい。

私も佐々木氏の考えに同意である。
今後のアプリ開発は「大平原」が主戦場になるだろう。携帯ベンダーはキャリアの下請けとして端末とアプリを作るのではなく、サービス開発という観点からアプリを作っていかなければならない。
また、柵が必要かどうかの議論は、今後のユーザ動向次第で変わってくると考える。Googleはユーザに対して性善説な意向を持っていることが多いので、Androidマーケットではアプリのチェックすら行わずに配布するようだ。ウィルスを撒き散らされる危険性も無きにしも非ずで、ユーザの自衛の精神が必要不可欠である。
最初は貧相な機能しかついていない携帯端末が、アプリケーションをダウンロードすることによって、ユーザの要望する端末に変化していく。先日、小池良次氏のクラウド本について記載したが、このホワイトボックスモデルがAndroidによって実現できる日も近いのだろう。

GoogleAndroidを出荷するまでもなく、既に目的を達した」 と郡山氏は語る。

当初、GoogleGoogleのサービスが携帯電話から使えないことを危惧していた。Googleからすれば、携帯電話からのインターネットアクセスが一般的になるのに、Googleのサービスが使えなければビジネスモデル(広告)が成り立たないというわけ。

そこで、ソフトウェアを提供するだけでは駄目なら丸ごと作ってしまえということで、Googleのサービスが全部使える GooglePhone(Android) を出すとGoogleが発表。すると、多くのメーカーが、Androidを使わなくてもGoogleのアプリケーションを動かさせるようにする、と言い出した。

Googleとしてはこれで当初の目的は達したのではないかと郡山氏は語る。Googleの目的は、Googleのサービスを使える携帯端末を増やすのが目的だったからである。しかし、Googleのスタンスも最近は多少変わっているとのこと。試作機のような形で市場にAndroidを提供すればよいという考えから、真剣にやっていくという姿勢になっている。

Googleの目的が、「Googleサービスを使える携帯端末を増やす」ということだけだったことに対して、私は衝撃を受けた。私は、Android戦略がGoogleによる顧客の囲い込みであると考えていたためである。郡山氏の見解は正しかったようで、iPhone/ipod touchなどは着々とGoogleサービスに対応している。

もし、本当にGoogleのスタンスが変わり、Androidを真剣に普及させようとしているのであれば、その鍵は AndroidGoogleサービスの連動 という鎖を断ち切れるかどうかにあるように思う。たとえば、日本ではGoogleよりもYahooのサービスのほうが統計的には人気がある。よって、AndroidによるYahooフォンやNIFTYフォンのように、サービス非依存にすることができれば普及が加速するだろう。