3.11後 日本経済はこうなる!

日本のアルファブロガーである池田信夫さんを中心とし、各界の専門家と対談したようすをまとめた書。

エネルギー政策やスマートグリッド、および復興の観点から、3.11後の日本経済を考えています。危機感を煽るだけの本ではなくて、「こうすれば日本経済はもっと良くなる!」 というポジティブな感触を得ました。単なる 「がんばろう」 ではないところも共感できるところ。

原発について

原発の是非から議論をするのではなくて、まずエネルギー政策を考える。そして、エネルギー政策を実現するためのオプションとして、原発をどうするのか考えなくてはいけない。確かに、原発のリスクは大きいし、放射線は怖いという感情を捨てることはできないけれども、じゃぁ、原発と引き換えに今ある生活をどこまで捨てることができるか。このトレードオフの関係を理解しないままで、原発反対を声高に叫ぶわけにはいかないですね。

天然ガスLNG)の可能性

世の中的には、太陽光発電がなかなか人気があるように見えてます。最近は、我が家の近くにある家の屋根にも、太陽光発電システムが取り付けられているのを見かけます。ただ、あまり太陽が照りつけるわけではない日本で、電力のベースロードとしては使うのは難しい。ベースは石油、石炭、水力(?)、原子力(?)あたりでまかない、電力のピークロード(日中帯)を補填するためのものとしては有力。本の中では、曇りや雨の日にはLNGを使った小型ガスタービンでの発電を代替として使うことが提案されています。

明日をひらくクリーンエネルギー天然ガス天然ガスについて~

発送電の分離

電力でも通信事業と同じような議論がされています。通信事業では、コア網とアクセス回線部分での分離がイギリスなどで実践されており、NTTの組織問題などが話題になるとアクセス回線を別会社とする案がいつも持ち出されます。電力業界だと、発電と送電で分離することが本のなかでも提案されています。通信業界でソフトバンクがやったようなイノベーションを期待しているようですが・・・日本ではこういうところは政治家と繋がっていることが多いようなので、ドラスティックな展開はあまり望めそうにないと私は感じます。

復興と復旧

なんだか同じ言葉のように思えますが、考え方はまるで別物。復興は「一度衰えたものが再び勢いを取り戻す事」、復旧は「こわれた物や乱れたものがもとの状態にもどること」。ただ単に”元に戻す(復旧)” だけではなくて、勢いを取り戻す(復興)にはどうするか?というアプローチが大切だと感じます。失ったものを復旧することにも価値はあるし、人間の感情としても自然なこと。だけど、日本の未来を考えれば、今のアジアにとって必要とされる都市として勢いを取り戻す(復興)ことを目指すべきです。本文中では、香港などの特区が例として挙げられていましたが、法人税などをなし(もしくは著しく低率)にして、企業の誘致を増やしていくことによって、雇用や活気を取り戻していくというのは非常に良い方向性に思えます。

スマートグリッドとIT

恥ずかしながら、スマートグリッドって「電力の見える化」程度の認識しか持っていませんでした。重要なポイントは電力の見える化ができるとどんなインセンティブを働かせることができるか、なんですね。デマンドレスポンス(もしくはネガワット:節約した電力)という概念なんかは、まったく私が見えていなかった部分でした。たとえば、私の家は30A契約しているのですが、MAXまで使うケースなんてほとんどありません。だから、一時的に契約を20Aまでにする。電力のピーク時には、その使わなかった10A分をネガワットとして計算して、払い戻す仕組みでインセンティブを働かせる。確かに、こういうところにITを組み合わせると、社会としてもっと効率がよくなります。

ちなみに、Facebookではこんなファンページがありました。こういうことを考えている人もいたんですね。

ピーク電力削減30A契約運動 | Facebook

おわりに

日本は資本主義の国ですが、復興とか賠償(東電関連)の話となると社会主義的な側面が強く出てくるように感じます。日本経済をよりよい方向に持っていくためには、資本主義のルールに則って進めていかないと、海外投資家にそっぽを向かれて、お金の流れが悪くなってしまう。そうならないようにするには、どうしたらいいか? 私も何ができるのかはよくわかりません。しかしながら、管(元)総理を言葉で叩いているだけじゃぁ駄目なことは確実です。