概略
ChatGPTに関わる人々にインタビューした内容をまとめた本。
タイトルの「アマゾンエフェクト」(※語源はバタフライエフェクト)は、ChatGPTが世界にどのような影響を与えるかわからないということを示唆している。
レビュー
ChatGPTの最前線にいる人達の考えを知ることは、将来を予測する際に非常に有益であった。
1年後、2年後には答えが明らかになる可能性が高い情報であるため、今読むことに価値があります。
ポイント
インターネット検索
Microsoftは検索エンジンのBingで収益を出す必要に迫られていないため、ChatGPTをBingに組み込んで、ユーザーが検索を行わなくなっても問題はない。
具体的には、ChatGPTとBingの検索とを組み合わせたBingAIがあり、AIが検索機能と同等の機能を実現している。
ChatGPTの学習のステップ
- 大量の会話サンプルで学習(質問と回答のペア)
- 回答の優先順位で学習(複数の回答から、人間の感覚に適したものを優先)
- 強化学習による報酬最大化
1,2では大量のデータを人手で学習し、3で報酬モデルを使って強化学習を行い、人間の好みを教え込む。
※ RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)
この結果、ChatGPTは適切な文章を出力できるようになった。
メタ(旧: Facebook)
Microsoft&OpenAI、Googleに次ぐ第3の企業であるメタ。
技術力は高いものの、あまりメディアには取り上げられていない。
象徴的なのは、メタが公開しているオープンソースである。
- SAM(セグメント・エニシング・モデル): 画像内の被写体をセグメンテーション(くり抜き)
- イメージバインド: 画像から音声を検索したり、音声から画像を検索可能なマルチモーダルな技術。他の生成AIと組み合わせることで、音声から画像を生成するようなことも可能になる。
製品やサービスが出てこない理由は、生成AI用のデータセンター建設が追いついていないためと考えられている。
ソフトウェア開発者
今後、「コードを書く」以上のことを求められる。
言語の選定や、アーキテクチャー設計などである。
現時点では、AIが書いたコードを人間がすべてレビューする必要がある。
Github Copilotの今後
例えば、「プルリクエストのコパイロット」があれば、プルリクエストのタイトルに記述した内容から、プルリクエスト全体を生成し複数のファイルを一度に変更できる。(ただし、現時点ではできていない)
今後数年間で、Githubの全領域にAIを導入していくとのこと。
コロプラの社員補助
- 有料版ChatGPTの利用料補助制度
- ChatGPT活用表彰制度
利用料補助制度は1ヶ月限定で、そのあとも随時延長の判断をしていくそう。
活用表彰制度は半年間を予定。ChatGPTを社内ツールに組み込むなどの成果物単位で応募。最大3件、1件あたり5万円の賞金を支払う。
利用料補助制度は、他にも、ソラコム、ビープラウド、MIXI、Nobollel、UUUM、Zaimなども適用されている。
プロンプトで制約を設定する
日本語特有のハイコンテクスト性(曖昧さ)を捨てていくトレーニングが必要。
プロンプト事例
- 最高の出力を出すために足りない制約条件があれば足してください。ただし、その足した制約条件を先に出力をしてから回答を出力してください
活用の方法(アウトプット)
利用者をパワーアップする
量を増やす
- (何回もChatGPTを使う)
質を上げる
- レビューしてください
角度を増やす(多様性を出す方向に使う)
- まだ出ていない視点を教えてください
- この文章をプランAとした場合、プランBからDまでを異なる角度から作成してください
利用者の作業負担を減らす
毎日発生する作業をChatGPTに任せることができる。
業務日報であれば、その日の内容を箇条書きで5行ほど書いておいて、「それっぽくまとめておいて」で解決。
よく使うプロンプトは、辞書登録しておく。
活用の方法(インプット)
効率よく吸収する
- 要点だけまとめて
- 小学5年生にわかるように要約して
今見えていない方向にどんな情報があるのかをインプットする
- 語られていない趣旨は何ですか
- 弱い主張はどこですか
- 上司がしそうな質問とその回答を作ってください
活用の方法(ユーザーペルソナを作る)
ある属性の人格やキャラクターを作るのは割と得意
- 顧客分布がこの状態のときに、顧客の意見や性質を統合したペルソナを作るとどうなりますか
父親と母親のペルソナを作って、その二人に息子の教育について議論させるというシミュレーションもできる。
AIブーム
第3次AIブームは「認識」を中心としたもの。
できることはほぼできてしまい、そろそろ終わりかなと言われていた。
2021年後半から生成AIが出てきてフェーズが変わった。後から見たら、「ここからが第4次ブーム」と言われるようになるかも。